水浸法による無痛大腸内視鏡挿入マニュアル

~本を読んだ人も読んでいない人も、水浸法の人もそうでない人も~

『水浸法による無痛大腸内視鏡挿入マニュアル』中外医学社より好評発売中。
本はマニュアル本ですので「なぜそうするか?」より「なにをするか?」の方に力点がおかれています。
このブログでは本を補完するため理論的な面を詳しく説明します。

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コロンモデルでS頂部を越えてスコープを引きはじめます。
SDが下方向に見えてきてダウンアングルで越えようと思いますがもう少しのところでアタッチメントがSDの屈曲に届きません。
押しても遠ざかりますし、引いても抜けて遠ざかります。

どうしてでしょうか?
今、スコープの屈曲部と腸管のS頂部が一致しています。ところがスコープの屈曲部から先端までの距離が腸管のS頂部からSDまでの距離より短いから届かないのです。私はスコープの屈曲部から先端までを硬性部と呼んでいます。だから硬性部長の長いスコープに変更するか、長いアタッチメントをつければいいのです。

でもそんなことをしなくても届かせる方法があります。最直近点でスコープをゆっくり90度ライトローテーションします。するといままで下に見えていたSDは右に見えます。右に回すに従ってだんだんSDが近づき届いたらライトアングルでSDを越えます。なぜ右に回すとSDがだんだん近づくのでしょうか?
じつは90度回すとスコープの硬性部は腹壁に対して垂直になります。SDから腹壁に垂直に下ろした線分の距離がスコープの硬性部より短いのでスコープ先端はSDに届くのです。

イメージが湧かない人は本にイラストがありますので見てください。

もしお腹の大きな人で腹壁からSDまでの距離が大きい人は、左下腹部手のひら圧迫をしてみて下さい。
押すのにつれて腹壁からSDまでの距離が小さくなりますので、100%スコープ先端はSDに届くわけです。

この方法はコロンモデルで100%成功しますが、人間でもほとんど成功します。
ただスコープを正確に90度回転してスコープ硬性部を腹壁に対して垂直、ベッドに対して水平にできるかどうかが成否の分かれ目です。
(コロンモデルのように人間もスケルトンなら簡単なのですが…)
水浸法による無痛大腸内視鏡挿入マニュアル p.113

最近、S状結腸をプル法で入れる人は増えてきましたが、まだ横行結腸はプッシュ法でやっている人が多いようです。
横行結腸も長い人はかなり難しい人もいますので、S状結腸をプッシュよりプルでやった方がいいのと全く同じ理由で横行結腸もプルでやった方がいいです。
すなわち横行結腸前半は押しますが、横行結腸中央部を越えたら後半はずっと引き続けて肝湾曲をこえます。
本では早期短縮というもっとエレガントな方法を紹介していますが、最低プルをした方がいいと思います。

この時の注意はS状結腸のプル法と同じですが、できるだけ空気を入れないで虚脱していた方が短縮抵抗性が無くやりやすいです。
引くときに回す方向はS状結腸と逆でレフトローテーションです。

私のワンパターンメソッドでは横行結腸中央部をダウンアングルでフックしますがこれも珍しいと思います。
コロンモデル実験で様々な方法を試験してこの方法が最適だと採用されました。
人間での経験からはこのようなフィードバックは難しいと思います。

本にも書きましたが、プル法の成功率はS状結腸より横行結腸の方が高く、ほとんどの例でプル法が成功します。
(体位変換しないと成功率は下がります)水浸法による無痛大腸内視鏡挿入マニュアル p.53

ワンパターンメソッドでは直腸は左に回します。
このような挿入法は珍しいと思います。
この入れ方は人間でやっていては思いつきません。
コロンモデルで直腸の入れ方を考えられるだけ全部やってみて一番にいいものを採用したまでです。
(そもそもワンパターンメソッドはそのように作りました)

胃カメラでは左を見たいときにレフトアングルを使う人は少ないでしょう。
たぶんレフトローテーションします。
食道がまっすぐなのでレフトローテーションはレフトアングルの代用として使えます。

しかし大腸ではそうはいかないときがあります。
S状結腸ではスコープはαループ気味にたわんでいることがあります。
このとき右に回すのはループ解除方向でいいのですが左に回すのはループを作ることになるので禁忌です。
もし襞が左に行くように見えたらレフトアングルを使いますがレフトローテーションはしません。

すなわちスコープの途中のねじれに配慮しなければ行けないので安易にローテーションしては行けないのです。
ところが直腸だけは別です。入れたばかりでなじれなどなく直線ですのでどうまわしても構いません。

直腸は左右アングルだけでも、上下アングルだけも、アップアングルに右ローテーションでも、左ローテーションでも入ります。
コロンモデル実験で操作が単純でもっともはやくスムーズなレフトローテーション法をワンパターンメソッドで採用しました。

こんな理由は知らなくても直腸は左に回して入れると簡単です。

直腸で左に回しておくと後にS状結腸を右に進むのにためができて無理な体勢にならなくて済むという利点もあります。水浸法による無痛大腸内視鏡挿入マニュアル p.103

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