水浸法による無痛大腸内視鏡挿入マニュアル

~本を読んだ人も読んでいない人も、水浸法の人もそうでない人も~

『水浸法による無痛大腸内視鏡挿入マニュアル』中外医学社より好評発売中。
本はマニュアル本ですので「なぜそうするか?」より「なにをするか?」の方に力点がおかれています。
このブログでは本を補完するため理論的な面を詳しく説明します。

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2022年08月

『実地医家のためのピロリ新時代の胃カメラ観察法と細径スコープを使った新しい大腸内視鏡挿入法』

【セミナー概要】
10:00-12:00 
「ピロリ菌時代の新しい胃カメラの考え方と見落としのない高速観察法」
2013年2月21日慢性胃炎にピロリ菌の除菌が保菌適応になりました。まさに「胃がん革命」です。それにともない、胃カメラの考え方も変化しています。慢性胃炎の見方が格段に進歩し、日常診療の内容も一変しました。その変更点を中心に解説します。またピロリ菌知識の一般普及に伴い、胃カメラ需要は高まっています。そこで大量の人数を短時間で見落としなく観察できる科学的観察手順である東京大学物療内科に伝わる粒良式観察法の理論と手順を紹介します。
13:00-15:00
「受動弯曲と極細スコープを使った誰にでもできる大腸内視鏡」
大腸内視鏡にはプッシュ法とプル法があります。プッシュ法は初心者でも行いやすいのですが痛みが強いのが難点でした。最近極細スコープや受動弯曲スコープなど押しても痛くないスコープが開発されています。プル法と比べての利点や、極細スコープを使う時の注意点など、「誰でもできる、押しても痛くない、極細スコープを使った大腸内視鏡挿入技術」を公開します。
(※今回の講演は、これまでの“水浸法”とは直接関係はありません)

午前の部:後藤・佐藤先生
「ピロリ菌時代の新しい胃カメラの考え方と見落としのない高速観察法」
 2013年2月21日慢性胃炎にピロリ菌の除菌が保菌適応になりました。まさに「胃がん革命」です。それに伴い、胃カメラの考え方も変化しています。慢性胃炎の見方が格段に進歩し、日常診療も一変しました。その変更点を中心に解説します。
 またピロリ菌知識の一般普及に伴い、胃カメラ需要は高まっています。そこで大量の人数を短時間で見落としなく観察できる科学的観察手順である粒良式観察法の理論と手順を紹介します。
午後の部:後藤→佐藤先生
「受動弯曲と極細スコープを使った誰でもできる大腸内視鏡」
 大腸内視鏡にはプッシュ法とプル法があります。プッシュ法は初心者でも行いやすいのですが痛みが強いのが難点でした。
 最近極細スコープや受動弯曲スコープなど押しても痛くないスコープが開発されています。プル法と比べての利点や、極細スコープを使うときの注意点など、「誰でもできる、押しても痛くない、極細スコープを使った大腸内視鏡挿入技術」を公開します。
 (※今回の講演は、これまでの”水浸法”とは直接関係はありません)

セミナーNo312
2015年8月23日(日) 10:00~15:00
スタンダード会議室 銀座二丁目店
(東京都中央区銀座二丁目6-15)
■後藤利夫 先生(新宿大腸クリニック 院長)
■佐藤達雄 先生(東京大学医学部付属病院物療内科)
■分野: 診療・診察技術/検査
■対象: 医師/看護師/検査技師


午前 ピロリ菌時代の新しい胃カメラの考え方と見落としのない高速観察法(東大の佐藤達雄先生と共演)(非公開)


午後 受動弯曲と極細スコープを使った誰にでもできる大腸内視鏡(2022年8月7日公開)

終了したセミナーの報告と開催の模様
■第312回セミナー『ピロリ新時代の胃カメラ観察法と細径スコープの大腸内視鏡挿入法』は盛会裏に終了しました。
 8月23日(日)に開催しました第312回医療技術セミナー『実地医家のためのピロリ新時代の胃カメラ観察法と細径スコープを使った新しい大腸内視鏡挿入法』は盛会裏に終了しました。
 講師には、大腸内視鏡の”水浸法”でこれまで何回もご登場になっている後藤利夫先生(新宿大腸クリニック院長)と、元東京大学医学部附属病院物療内科消化器科の佐藤達雄先生でした。後藤先生は、昨年の11月以来、佐藤先生は昨年の3月以来のご出演です。
 講義の組立は、午前が上部消化管の検査を専門に行っておられる佐藤先生の『実地医家のためのピロリ新時代の胃カメラ観察法』でした。かつて東京大学で多くの医師を育て上げられた恩師の粒良邦彦先生の教え「早くて見逃しのない観察法」「回転式観察法→垂直観察法」「動的観察法」を忠実に守り、実践されておられる技術をお話になられました。2013年2月21日に、「慢性胃炎」に保険適応が行われ、後藤先生は『胃がん革命日』と呼ばれましたが、ピロリ菌感染者の3%に胃がんが発生する現状を認識され、それまでは「毎年、胃カメラ検査を受けましょう」から、「ピロリ菌の除菌をしましょう」にスローガンが変わったことを指摘され、胃がん死亡の状況は年に5万人あり、今後30年はまだ多いであろうと予測されました。そこで、”早くて見落としのない胃カメラ観察法”の出番であり、佐藤先生は、他の医師の方が、上部消化管を検査されるのに15分かかっておられるところを、4分で検査され、40枚の写真を撮られて、かつ見落としのない技術に高められて、この技術を世に広め、どなたかに引き継ぎたいと考えられている、ことを紹介されました。その後、佐藤先生により、最新の症例の胃カメラ写真を約600枚供覧され、写真の分析やがんの発見の経緯等につき、披露されました。
 午後は、後藤利夫先生の『細径スコープを使った新しい大腸内視鏡挿入法』と題され、オリンパス社の”受動湾曲”という機能の優れた細径の大腸内視鏡をいくつか例に出されて推奨され、受動湾曲という機能は「屈曲部における挿入性」のうえで重要であり、極細のスコープは、癒着に強い痩せた人に向いている・・・と強調され、極細スコープのメリットについて解説され、その後挿入法(プッシュ法、ループ解除法、癒着とは?)にも触れて、詳細に解説していただきました。他に、S状結腸でのループ解除、脾湾でたわませないコツ、練習法等につき動画も含めて、ご披露いただきました。
 今回は、水浸法とは直接関係ありませんでしたが、いつものように講義を聞く受講者のために、工夫を凝らしたスライドや動画を作成される等、これらの技術の発展と普及への並々ならぬ情熱を感じさせる名講義でありました。

2014年9月7日#273 『実地医家のためのわかりやすい大腸内視鏡挿入法』-1.“水浸法”とワンパターンメソッド- 午前 水浸法 午後 ワンパターンメソッド のときに、午後のおまけとしてFlashでCF格言集を作りました。もうFlashが動かないので、テキストにしました。(すみません。今月は動画はありません)

水浸法20年
 1995年出願のポンプの特許に1994年の水浸法のデータがあります。「挿入時間は平均15分から7分に短縮され、1日の検査件数は7人から15人に増加した」

引きは早ければ早いほどいい
押せば押すほど痛みがまします。一番早いタイミングで引いてストレートにするのが一番上手い人です。 

画面にだまされない
画面が見えるままに押していってはループを作ります。コロンモデルと見え方が違うのは捻れているせいなので、引いて短縮したらコロンモデルと同じになります。

アタッチメントは神の手
腸管が虚脱していて壁が近いのでアタッチメントがあると赤玉にならず水浸法では有利です。水の中では見えなくなりますが襞をかき分けてくれます。

腹部圧迫はループの前に
腹部圧迫はたわまないためにやるものです。痛くありません。たわんでからやるから痛いのです。たわんでいるときにやるのは更に押すことではなく、ループ解除です。


体位は変える
横行結腸は左側臥位より仰臥位の方が短縮しやすいです。

痛みの先に穿孔あり
いつも苦痛を与えているといつか穿孔します。苦痛を麻酔でごまかすのも危険です。麻酔を使わなくても痛くないようにするのが最も安全です。

プッシュ・プル・早期短縮
S状結腸と横行結腸の挿入法は3種類あります。全部押してループを作って解除する方法と、前半は押して後半は引く方法と、前半から引く方法です。

先端フックは90度
水浸法で多用する先端フックは先端アタッチメントを屈曲部に当てて引きます。そのときのアングル角は90度くらいですのでアップ以外のアングルも使えます。

押すときまっすぐ引くとき回す
押すとき回すとすぐに捻れてループができます。引くときは捻れやループを解除するように回します。その回し方が定点固定法です。 

Sは右、Tは左回し
前半S状結腸はライトローテーション
後半横行結腸はレフトローテーション
厳密には定点固定法に従う

引くとき画面は固定する
スコープをプルして腸管を短縮するときの原則は、画面を動かさないようにスコープを動かすこと。 これを”定点固定法”という。

スコープは患者が選ぶ
スコープを医師の好みではなく患者の体型に合わせて選択する。太った人に太いスコープ、やせた人に細いスコープ、高齢・手術歴・便秘は5kgマイナス。

挿入困難スコープ変える
S状結腸が癒着で屈曲が強すぎてスーパーアップでも越えられないときは細いスコープに変えると難なく入ります。

ポンプチョンチョン100cc
水浸法も水が多すぎてはメリットは無い。ポンプは連続的にガーと踏まないでチョンチョンとトータル100回踏んで100ccで挿入する。

基本の構えは12時の構え
ワンパターンメソッドは基本の構えで始まり基本の構えで終わる。また前半の終了時も基本の構えだ。

中は外の2倍速
左手を回すとスコープの先端は2倍回る
この”2倍進角の法則”はワンパターンメソッドの根拠です。

左手はお盆、スコープは板
2倍進角の法則が成り立つための条件は2つあります。左手手のひらは常に上を向きます。スコープ体外部は捻れが無く常に一平面上にあります。

指で覚えるワンパターン
ワンパターンメソッドを覚えるのに指内視鏡が便利だ。右手人差し指 をスコープ先端と考える。この時2倍進角の法則に従って左手も連動して動く必要がある。

ライトアングルはグリップ変える
強いライトアングルはワンパターンメソッドの命。そのためライトアングルをかけるときは左手グリップの持ち方を変える。

人はコロンモデルの10倍
コロンモデル10倍則によると人間平均挿入時間はコロンモデルの挿入時間の10倍である。だからコロンモデルを早く入れる練習をする。

コロンモデルは1分で
コロンモデル1分は人10分相当で人でやってもかなり上手いはずです。挿入不能例はほとんど無いでしょう。コロンモデル練習では1分以内をめざします。

挿入時間を物差しとして使う
挿入時間は患者さんの難易度の物差しであり、自分の技術の物差しでもあるので記録しておくのが望ましい。

30分であきらめよ
挿入率を上げたくていつまでも粘る人がいますが、患者さんは2度と受けたくなくなります。大腸内視鏡は時の運なので今日はダメだったが次回頑張りましょう。

空気も水も入れすぎない
吸引すること
その前に入れすぎないこと
腸が虚脱していると短縮しやすいから

水浸法は画面が近い
水浸法は入れる水の量が少なく腸管が虚脱しているのでいつも壁が目前に迫っている。最初とまどうかもしれないがなれたらすぐにコロンモデルと同じだと気づく。

人ではS前半でプルする
人ではコロンモデルよりも少し早く短縮をはじめる。水浸法なら先端フックでS前半でも短縮できるからだ。T前半でやることもある。

アングルとローテは同時に使う
たいてい右ローテのときは右アングル、左ローテのときは左アングルを併用する。とくにS状結腸では有用。いつも同時に使うようにくせにしておくとよい。

脾弯は12時40cm三角形
脾弯で前半が終わる。脾弯を間違うと大変だ。脾弯をアップで越えたとき、左手12時で距離は40cm、画面は横行結腸の三角形が見えていなければいけない。

硬度は脾弯で1上げる
硬度可変スコープなら最初1でスタートして脾弯曲から後半は2に上げる。 

引上げはレフトターンダウンプル
横行結腸を短縮することを引き上げるという。このときレフトターン+ダウンアングル+プル操作を同時に行う。

横行結腸は3回引き上げる
引きは転ばぬ先の杖。横行結腸で引き上げ作業をおまじないのように3回やると自然に短縮されて入りやすくなる。

T後半は襞を立てる
横行結腸中央部はダウンアングルだがすぐにレフトターンしてレフトアングルにチェンジする。このとき画面の襞は垂直に立てて真左に進むと進路がわかりやすい。

スコープは離して持つ
スコープを持つ右手は患者さんのお尻から離れて弱く持つのがコツ。スコープが操作しやすいし体内のスコープの情報がわかりやすい。

押したらすぐ引く
癒着で先端フックで短縮できないときは少し押して屈曲部でフックしてすぐに引くこと。押し続けたらループを作るだけ。

手抜きをしない
めんどくさいから簡単そうだからといって自分がラクするための手抜きをしないで、患者さんがラクに検査が受けられるために何でもやることです。

親と思う、天皇と思う
患者さんをいつも自分の親と思って、天皇陛下と思って検査していたら、どんなVIPが来てもやることは同じです。

[用語解説]
腸管が虚脱・・・水浸法では一人あたり100~200ccの水しか入れない。空気法の約1/10。
短縮抵抗性・・・膨らんだ風船が元の形に戻ろうとするように空気や水が多いと短縮するのに抵抗する力が働く。
早期短縮・・・S頂部に到達する前のS前半、T中央部に到達する前のT前半で短縮する。
先端フック・・・通常のフックよりも弱いが強い屈曲が無くても襞があればいつでも短縮できる。
定点固定・・・短縮するときは回すが、その引き量と回し量の最適化は画面を動かさないようにする。
ワンパターンメソッド・・・人の腸も早期短縮してコロンモデルの形にすればワンパターンで挿入できる。
コロンモデル10倍則・・・コロンモデル1分=人間平均10分。
短期間で修得・・・早い人は3ヶ月でマスター。

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