2022年4月12日 「苦痛のない内視鏡検査」 仁厚会病院で職員向け説明会を行いました。

苦痛のない内視鏡


現在日本では毎年100万人が亡くなっている。
胃がん5万、大腸がん5万、コロナは2年で2万。
コロナにはワクチンがある。それでもワクチンを打たない人もいる。
死亡者数で比較すれば5000倍はコロナの方が怖いのにワクチンを打たない。
自然に死ぬのは許容するが、人に殺されるのが嫌だという一種の自然崇拝。

胃がんには胃カメラ、大腸がんには大腸内視鏡がある。
受けているのは胃カメラで半数、大腸内視鏡で4人に1人。
検査件数をいくら増やしても受ける人は受けるが受けない人は受けない。
医師も、検査の精度を上げることしか考えていない。
一度も検査を受けない人をどうやって救うのか?
私は苦痛のない胃カメラと苦痛のない大腸内視鏡を考えた。

胃がんの予防について


胃がんはピロリ菌(と免疫)が起こす慢性胃炎が原因となる。現在ピロリ菌がいる人は10%胃がんになるのでピロリ菌の除菌が必要。現在ピロリ菌がいなくても過去にいて慢性胃炎がある人は3%胃癌のリスクが有るので毎年の胃カメラ検査が必要。慢性胃炎がなくピロリ菌もいなければ胃カメラは3年毎でよい。

大腸がんの予防について


腸内細菌(と免疫)が起こす慢性腸炎や毒性物質が原因で大腸ポリープができて大腸がんとなる。内視鏡検査の30%に大腸ポリープが発見され、3%に大腸がんが見つかる。ポリープ切除者は1年後、無かったものは3年後に再検査する。

苦痛のない胃カメラについて


1.経鼻法は細いカメラを使って鼻から入れる方法。ラクなのは鼻から入れるからだと思われているが、実はカメラが細いから。その証拠にこのカメラを口から入れてもラク。欠点はスコープの先についているカメラの直径が小さいので太いカメラより画質が悪く見落としやすい。
2.鎮静法は半覺醒法ともいい、セルシンやドルミカムなどの鎮静剤を使って半分寝かせた状態にして検査する。効きにばらつきがありよく効く人は無痛だが、あまり効かない人は苦しい。
3.新しい「プロポフォール」麻酔法は麻酔剤を使って完全に寝かせた状態で検査する。プロポフォールは即効性があり、その人に合った最適な量を調節しながら入れていくので100人中100人に同じ深さの麻酔がかけられる。鎮静法で苦しかった人でも苦しくない。半減時間は5分で自然にすぐにスッキリ覚める。ハンブルグ大学教授だった堂本先生が湘南鎌倉総合病院で始め、15年前に私が千葉西総合病院、千葉徳洲会病院、鎌ヶ谷総合病院、湘南厚木病院に紹介した方法で今まで50万人の実績がある。

苦痛のない大腸内視鏡について


大腸検査は空気をまったく入れない水浸法。従来は空気をたくさん入れたが、その代わりにごく少量の水を入れるだけなので、お腹が張って苦しくなることがない。空気より水の方が滑りがいいので内視鏡スコープを押さなくてもスルスルと挿入される。おなかの中でスコープがループを作ることも無く、麻酔をしなくても苦痛はない。希望者には麻酔を使う。麻酔をすると苦痛を訴えないので穿孔事故が心配だが、痛くない水浸法はその心配がない。麻酔の量も少なくて済み麻酔事故のリスクも少ない。水浸法は東大の粒良邦彦先生が発案し、弟子の田淵正文先生がストレイト法として始め、私が水浸法として30年前に完成した。

まとめ


胃カメラは「プロポフォール麻酔」、大腸内視鏡は「水浸法」によって苦痛がなくなった。
これまで検査を受けなかった人に特におすすめする。

胃カメラのプロトコル


胃カメラではなるべく麻酔に誘導してください。セルシン、ドルミカム等の鎮静剤による半覚醒と違い、プロポフォールは麻酔薬による麻酔下内視鏡です。意識はありません。その分、呼吸管理が大切になります。その患者さんの最適量まで追加しますので、追加しやすいベンフロン注射針が便利です。卵、大豆アレルギーには使えません。麻酔前にピロリ歴を確認してください。酸素飽和度モニターと酸素、カニューラ、アンビューバッグ、挿管キットを用意してください。
ルーチンに80歳以上2ml、70歳以上80歳未満3ml、70歳未満5mlを静注します。その後は医師の指示により1mlずつ追加します。5mlのシリンジに分けて予め用意しておいてください。意識がないため唾液を外に出すことができませんので、頭を下げる姿勢を取らせます。また、挿入時は顎挙上します。検査前半は舌根が落ちやすく酸素飽和度が下がります。90未満で①呼吸確認し「自発あります」と報告、②顎挙上、③医師の指示により酸素投与します。半減時間は5分ですので検査後半は覚醒してきますので体動があれば医師に「体動あります」と報告、医師の指示により追加します。

理想の体位:左足は伸ばし、右足は折り曲げるSIMS体位。お尻は後ろ頭は前のsniffing position(花の匂いを嗅ぐ姿勢)。枕は肩幅より低く(head down)、肩を入れ(うつ伏せ気味)ます。すべて唾液を外に出しやすくするためです。また挿入時は顎は挙上します。これにより口腔内にスペースができ、コンタクトせずに正中から進入でき、経口で経鼻よりラクに挿入できます。

大腸内視鏡のプロトコル


水浸法なら麻酔を使わなくても痛いというのは5%未満です。大腸内視鏡ではなるべく無麻酔に誘導してください。ベンフロンを入れておけば痛かったらすぐに麻酔を使うという方法も可能です。アタッチメント、ポンプとぬるま湯を用意してください。検査と同時にタイマーを入れます。途中で体位変換を一度、腹部圧迫を一度行います。仰臥位では左足の滑り止めがあると便利です。抜去時はいつでもホットバイオプシー、ポリペクトミー、EMRができるようにしておきます。ポリペク時の高周波の出力は高周波の機種の違いを吸収するっため赤、黄、青の色で指示します。クリップは必ず使いますのでスネアーと同時に用意してください。

理想の体位:側臥位では患者をなるべくベッドの術者よりに寄せ、足は椅子に座るように直角に揃えます。つまり「お尻は後ろ、足は前」となります。患者さんは術者寄りにいることで、術者の疲れを軽減します。また中央にいると落下防止に2人が必要ですが、寄せることで落下側は限定され1人で大丈夫です。