コロンモデルでS頂部を越えてスコープを引きはじめます。
SDが下方向に見えてきてダウンアングルで越えようと思いますがもう少しのところでアタッチメントがSDの屈曲に届きません。
押しても遠ざかりますし、引いても抜けて遠ざかります。

どうしてでしょうか?
今、スコープの屈曲部と腸管のS頂部が一致しています。ところがスコープの屈曲部から先端までの距離が腸管のS頂部からSDまでの距離より短いから届かないのです。私はスコープの屈曲部から先端までを硬性部と呼んでいます。だから硬性部長の長いスコープに変更するか、長いアタッチメントをつければいいのです。

でもそんなことをしなくても届かせる方法があります。最直近点でスコープをゆっくり90度ライトローテーションします。するといままで下に見えていたSDは右に見えます。右に回すに従ってだんだんSDが近づき届いたらライトアングルでSDを越えます。なぜ右に回すとSDがだんだん近づくのでしょうか?
じつは90度回すとスコープの硬性部は腹壁に対して垂直になります。SDから腹壁に垂直に下ろした線分の距離がスコープの硬性部より短いのでスコープ先端はSDに届くのです。

イメージが湧かない人は本にイラストがありますので見てください。

もしお腹の大きな人で腹壁からSDまでの距離が大きい人は、左下腹部手のひら圧迫をしてみて下さい。
押すのにつれて腹壁からSDまでの距離が小さくなりますので、100%スコープ先端はSDに届くわけです。

この方法はコロンモデルで100%成功しますが、人間でもほとんど成功します。
ただスコープを正確に90度回転してスコープ硬性部を腹壁に対して垂直、ベッドに対して水平にできるかどうかが成否の分かれ目です。
(コロンモデルのように人間もスケルトンなら簡単なのですが…)
水浸法による無痛大腸内視鏡挿入マニュアル p.113