2014年9月7日#273 『実地医家のためのわかりやすい大腸内視鏡挿入法』-1.“水浸法”とワンパターンメソッド- 午前 水浸法 午後 ワンパターンメソッド のときに、午後のおまけとしてFlashでCF格言集を作りました。もうFlashが動かないので、テキストにしました。(すみません。今月は動画はありません)
水浸法20年
1995年出願のポンプの特許に1994年の水浸法のデータがあります。「挿入時間は平均15分から7分に短縮され、1日の検査件数は7人から15人に増加した」
引きは早ければ早いほどいい
押せば押すほど痛みがまします。一番早いタイミングで引いてストレートにするのが一番上手い人です。
画面にだまされない
画面が見えるままに押していってはループを作ります。コロンモデルと見え方が違うのは捻れているせいなので、引いて短縮したらコロンモデルと同じになります。
アタッチメントは神の手
腸管が虚脱していて壁が近いのでアタッチメントがあると赤玉にならず水浸法では有利です。水の中では見えなくなりますが襞をかき分けてくれます。
腹部圧迫はループの前に
腹部圧迫はたわまないためにやるものです。痛くありません。たわんでからやるから痛いのです。たわんでいるときにやるのは更に押すことではなく、ループ解除です。
体位は変える
横行結腸は左側臥位より仰臥位の方が短縮しやすいです。
痛みの先に穿孔あり
いつも苦痛を与えているといつか穿孔します。苦痛を麻酔でごまかすのも危険です。麻酔を使わなくても痛くないようにするのが最も安全です。
プッシュ・プル・早期短縮
S状結腸と横行結腸の挿入法は3種類あります。全部押してループを作って解除する方法と、前半は押して後半は引く方法と、前半から引く方法です。
先端フックは90度
水浸法で多用する先端フックは先端アタッチメントを屈曲部に当てて引きます。そのときのアングル角は90度くらいですのでアップ以外のアングルも使えます。
押すときまっすぐ引くとき回す
押すとき回すとすぐに捻れてループができます。引くときは捻れやループを解除するように回します。その回し方が定点固定法です。
Sは右、Tは左回し
前半S状結腸はライトローテーション
後半横行結腸はレフトローテーション
厳密には定点固定法に従う
引くとき画面は固定する
スコープをプルして腸管を短縮するときの原則は、画面を動かさないようにスコープを動かすこと。 これを”定点固定法”という。
スコープは患者が選ぶ
スコープを医師の好みではなく患者の体型に合わせて選択する。太った人に太いスコープ、やせた人に細いスコープ、高齢・手術歴・便秘は5kgマイナス。
挿入困難スコープ変える
S状結腸が癒着で屈曲が強すぎてスーパーアップでも越えられないときは細いスコープに変えると難なく入ります。
ポンプチョンチョン100cc
水浸法も水が多すぎてはメリットは無い。ポンプは連続的にガーと踏まないでチョンチョンとトータル100回踏んで100ccで挿入する。
基本の構えは12時の構え
ワンパターンメソッドは基本の構えで始まり基本の構えで終わる。また前半の終了時も基本の構えだ。
中は外の2倍速
左手を回すとスコープの先端は2倍回る
この”2倍進角の法則”はワンパターンメソッドの根拠です。
左手はお盆、スコープは板
2倍進角の法則が成り立つための条件は2つあります。左手手のひらは常に上を向きます。スコープ体外部は捻れが無く常に一平面上にあります。
指で覚えるワンパターン
ワンパターンメソッドを覚えるのに指内視鏡が便利だ。右手人差し指 をスコープ先端と考える。この時2倍進角の法則に従って左手も連動して動く必要がある。
ライトアングルはグリップ変える
強いライトアングルはワンパターンメソッドの命。そのためライトアングルをかけるときは左手グリップの持ち方を変える。
人はコロンモデルの10倍
コロンモデル10倍則によると人間平均挿入時間はコロンモデルの挿入時間の10倍である。だからコロンモデルを早く入れる練習をする。
コロンモデルは1分で
コロンモデル1分は人10分相当で人でやってもかなり上手いはずです。挿入不能例はほとんど無いでしょう。コロンモデル練習では1分以内をめざします。
挿入時間を物差しとして使う
挿入時間は患者さんの難易度の物差しであり、自分の技術の物差しでもあるので記録しておくのが望ましい。
30分であきらめよ
挿入率を上げたくていつまでも粘る人がいますが、患者さんは2度と受けたくなくなります。大腸内視鏡は時の運なので今日はダメだったが次回頑張りましょう。
空気も水も入れすぎない
吸引すること
その前に入れすぎないこと
腸が虚脱していると短縮しやすいから
水浸法は画面が近い
水浸法は入れる水の量が少なく腸管が虚脱しているのでいつも壁が目前に迫っている。最初とまどうかもしれないがなれたらすぐにコロンモデルと同じだと気づく。
人ではS前半でプルする
人ではコロンモデルよりも少し早く短縮をはじめる。水浸法なら先端フックでS前半でも短縮できるからだ。T前半でやることもある。
アングルとローテは同時に使う
たいてい右ローテのときは右アングル、左ローテのときは左アングルを併用する。とくにS状結腸では有用。いつも同時に使うようにくせにしておくとよい。
脾弯は12時40cm三角形
脾弯で前半が終わる。脾弯を間違うと大変だ。脾弯をアップで越えたとき、左手12時で距離は40cm、画面は横行結腸の三角形が見えていなければいけない。
硬度は脾弯で1上げる
硬度可変スコープなら最初1でスタートして脾弯曲から後半は2に上げる。
引上げはレフトターンダウンプル
横行結腸を短縮することを引き上げるという。このときレフトターン+ダウンアングル+プル操作を同時に行う。
横行結腸は3回引き上げる
引きは転ばぬ先の杖。横行結腸で引き上げ作業をおまじないのように3回やると自然に短縮されて入りやすくなる。
T後半は襞を立てる
横行結腸中央部はダウンアングルだがすぐにレフトターンしてレフトアングルにチェンジする。このとき画面の襞は垂直に立てて真左に進むと進路がわかりやすい。
スコープは離して持つ
スコープを持つ右手は患者さんのお尻から離れて弱く持つのがコツ。スコープが操作しやすいし体内のスコープの情報がわかりやすい。
押したらすぐ引く
癒着で先端フックで短縮できないときは少し押して屈曲部でフックしてすぐに引くこと。押し続けたらループを作るだけ。
手抜きをしない
めんどくさいから簡単そうだからといって自分がラクするための手抜きをしないで、患者さんがラクに検査が受けられるために何でもやることです。
親と思う、天皇と思う
患者さんをいつも自分の親と思って、天皇陛下と思って検査していたら、どんなVIPが来てもやることは同じです。
[用語解説]
腸管が虚脱・・・水浸法では一人あたり100~200ccの水しか入れない。空気法の約1/10。
短縮抵抗性・・・膨らんだ風船が元の形に戻ろうとするように空気や水が多いと短縮するのに抵抗する力が働く。
早期短縮・・・S頂部に到達する前のS前半、T中央部に到達する前のT前半で短縮する。
先端フック・・・通常のフックよりも弱いが強い屈曲が無くても襞があればいつでも短縮できる。
定点固定・・・短縮するときは回すが、その引き量と回し量の最適化は画面を動かさないようにする。
ワンパターンメソッド・・・人の腸も早期短縮してコロンモデルの形にすればワンパターンで挿入できる。
コロンモデル10倍則・・・コロンモデル1分=人間平均10分。
短期間で修得・・・早い人は3ヶ月でマスター。